企画趣旨
『景観開花。』は、土木デザインに関心をもつ若者にその力を試す機会を提供するとともに、土木デザインの可能性を広く社会に示すことを目的とした設計競技イベントである。
戦後の成長期における日本の土木事業では、早急な社会基盤整備の要求を受けて機能性と効率性が優先され、全国各地に画一的な土木施設を生んだ。
しかし、整備の進展・拡充に伴って社会の関心や要請は量から質へと転換し、その場所が持つ意味や役割に即し、風景と調和した土木デザインの重要性が認識されるようになった。
こうした背景のもと2004年に誕生した『景観開花。』は、その時々の世相や土木における理想を反映したテーマを毎年設定し、「未来へつなぐ新時代の土木デザイン」や「人々が交わる『まち』とそれを支える土木構造物のあり方」などについての提案を募ってきた。
一年間の中断を挟み、2020年にリニューアルした後は、激変する社会情勢に対応したこれからの土木デザインのあり方について、ハード・ソフトの両面から提案を求めた。
昨年度の『景観開花。2025』では、近代土木の歴史的な蓄積を踏まえつつ、現在直面している社会課題に対応する土木デザインのあり方を問い直す場とした。本年度の『景観開花。2026』もこのスタンスを継承し、人口減少による後継者不足・老朽化が進行する港湾において、これからのみなとまちのあり方を問う。地域固有の歴史・文化を宿す港の文脈を活かし、土木構造物によって地域独自の魅力が引き出された持続性のあるみなとまちの提案が生まれることを期待する。
設計テーマ
DOCKing Port
詳しくはEntry.をご覧ください。
審査方法
審査は、一次審査会をオンラインで、最終審査会を対面で開催する。
一次審査会は審査委員と「景観開花。」実行委員が出席し、非公開で実施する。事前に提出された無記名のパネルデータ・模型写真データ・作品概要を用いて審査委員4名が審査を行い、入賞作品を5点前後決定する。
最終審査会は、審査委員、協賛企業の代表者、一次審査会の入賞団体、「景観開花。」実行委員が出席し、公開で開催する(仙台を予定)。入賞団体は作品のプレゼンテーションと質疑応答を行い、この結果により審査員が最優秀賞と優秀賞を決定、それ以外の入賞作品を佳作とする。
審査日程
エントリー開始 |2025年7月14日(火)
エントリー締切 |2026年10月27日(火)
提出物締切 |2026年10月28日(水)
一次審査会 |2026年11月12日(木)
最終審査会 |2026年12月26日(土)
会場
一次審査会|オンラインでのweb会議ツールを用いた遠隔開催(非公開)
最終審査会|対面開催(東北大学 災害科学国際研究所を予定)
当日の様子はYouTubeでライブ配信、後日アーカイブ配信予定
賞金等
賞金 |最優秀賞 20万円 ✕ 1点
優秀賞 10万円 ✕ 1点
佳作 4万円 ✕ 数点
特別賞 2万円 ✕ 数点
参加賞|一次審査会における審査委員からの自作品の講評
審査委員紹介

西村 浩
Hiroshi Nishimura
建築家/クリエイティブディレクター
株式会社ワークヴィジョンズ 代表取締役
株式会社 まちなか不動産 代表取締役
株式会社 リノベリング パートナー
景観開花。2026審査委員長
詳細
1967年佐賀県生まれ。
東京大学工学部土木工学科卒業。
同大学院工学系研究科修士課程修了後、1999年にワークヴィジョンズ一級建築士事務所を設立し、土木出身ながら建築の世界で活躍する。建築・リノベーション・土木分野のデザインに加えて、全国各地の都市再生戦略の立案やまちづくりのディレクションを手掛け、まちとそこで暮らす人々の豊かで愉しい日常づくりを実践している。2011年には佐賀市で「わいわい!!コンテナ」を立ち上げ、2013年にはシェアードワークオフィス「マチノシゴトバCOTOCO215」を開設。さらに2019年からは「呉服元町ストリートマーケット」を開催し、2020年にはベーグル専門店「MOMs’ Bagel」をオープンするなど、自らもプレイヤーとして佐賀市呉服元町のエリア再生にも取り組んでいる。
代表作である北海道岩見沢市の「岩見沢複合駅舎」では、日本建築学会賞(作品)をはじめ、2009年度グッドデザイン賞・大賞の他、BCS賞、ブルネル賞、アルカシア建築賞、公共建築賞など国内外の数多くの賞を受賞している。
主な受賞歴
2019年土木学会デザイン賞(長崎漁港防災緑地「おのうえの丘」)
日本空間デザイン賞2021 KUKAN OF THE YEAR(神水公衆浴場)
2021年度グッドデザイン賞・金賞(神水公衆浴場)、グッドデザイン賞(佐賀市呉服元町ストリートマーケット、鹿児島世界文化遺産オリエンテーションセンター、福島県石川町文教複合施設「モトガッコ」、糸魚川市「キターレ」)
2021年度都市景観大賞特別賞(糸魚川駅北地区)
2021年度土地利用モデル大賞/国土交通大臣賞(佐賀市呉服元町ストリートマーケット)
2023年度グッドデザイン賞(盛岡バスセンター、ふきあげ納富病院、九州佐賀国際空港リノベーション)
2024年度土木学会デザイン賞最優秀賞(SAGAサンライズパーク+栄光橋+佐賀市文化会館西側広場)
他

岩瀬 諒子
Ryoko Iwase
建築家
岩瀬諒子設計事務所 主宰
京都大学 助教
詳細
新潟県生まれ。
京都大学大学院在学中「景観開花。2007」にて佳作を受賞。
同大学院を修了後、EM2N Architects (スイス・チューリッヒ) 、隈研吾建築都市設計事務所で建築・都市デザインに携わる。2013年、「水都大阪」再生プロジェクトの一環として実施された「木津川遊歩空間アイディアデザインコンペ」で最優秀賞を受賞。これを機に岩瀬諒子設計事務所を設立し、独立。2017年には代表作となる木津川遊歩空間「トコトコダンダン」が竣工し、防災施設としての堤防機能と、人々が憩い交流する水辺空間が融合したランドスケープを実現した。建築空間からパブリックスペースまで、領域にとらわれず幅広く設計活動に取り組んでいる。
主な受賞歴
2017年 日本造園学会学会賞設計作品部門(木津川遊歩空間整備事業「トコトコダンダン」)
2018年 和歌山市和歌山城前広場及び市道中橋線設計事業者の公募型プロポーザル1等
2018年 グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)(木津川遊歩空間「トコトコダンダン」)
2019年 ベストデビュタント賞(空間・インテリアデザイン部門)
2019年 東京藝大美術エメラルド賞
2019年 第17回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 日本館 出展作家として選出
2023年 グッドデザイン賞(満寿美公園)
他

岡田 智秀
Tomohide Okada
日本大学理工学部まちづくり工学科 教授
詳細
1967年東京都生まれ。
日本大学大学院理工学研究科海洋建築工学専攻博士課程を修了。日本大学理工学部助手、米国ハワイ州立大学海洋・地球科学研究所客員研究員を経て、日本大学理工学部まちづくり工学科准教授に着任。2014年より教授を務め、現在に至る。
ウォーターフロントやビーチフロントのまちづくりを専門とし、海岸地域から都市中心市街に至るまで幅広いフィールドを対象に、水辺空間の景観デザインや利活用、住民参加による地域づくりの研究・実践を行っている。東日本大震災後には福島県いわき市四倉地区の復興まちづくりに携わり、地域住民との協働による復興計画や公共空間の再生を支援。また、全国各地で景観計画や地域活性化に関する委員・アドバイザーを歴任し、学術研究と実践の双方から景観まちづくりに取り組んでいる。
主な受賞歴
1999年日本沿岸域学会・論文賞(東京港臨海部におけるパブリックアクセスに関する評価)
2003年 日本建築学会関東支部論文コンペ・最優秀賞(都市臨海部を核とした環境配慮型都市再生のパラダイム)
2006年 日本沿岸域学会出版・文化賞(都内運河の新たな活性化方策としての“フローティングレストラン”実現化プロジェクト)
2012年 日本都市計画学会・年間優秀論文賞(海岸空間とその背後空間を一体的に捉えた新たな海岸まちづくりに向けて-米国ハワイ州の“海岸線セットバックルール”に着目して-)
他

吉村 崇
Takashi Yoshimura
株式会社設計領域 代表取締役
詳細
1978年兵庫県西宮市生まれ。
東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻修了。小野寺康都市設計事務所を経て、2009年に(株)設計領域を設立。土木・建築をはじめとする領域の垣根を越え、「デザインの力で社会を支える風景をつくる」ことを理念として、全国各地で設計活動を展開。これまでに松山市花園町通り、富士山本宮浅間大社神田川ふれあい広場、丹生川ダム左岸天端広場など数多くの空間デザインを手がけてきた。
2014年には長崎駅舎・駅前広場等デザイン基本計画作成業務プロポーザルにて最優秀選定。以降、駅舎の基本デザイン・デザイン監修、駅前広場のデザイン・設計まで一貫して携わり、「港に面した頭端駅」という長崎駅ならではの立地を生かした駅空間のデザインを担う。また、静岡県清水港では2014年より継続してエリア全体のウォーターフロントデザインに参画。防潮堤整備を契機に、開かれた水辺空間の再構築に向けて官民一体となって取り組んでいる。
主な受賞歴【設計領域担当プロジェクト】
2012年 グッドデザイン賞(尾鷲コーポラティブフォレスト計画)
2014年 土木学会デザイン賞・奨励賞(丹生川ダム)
2017年 土木学会デザイン賞・奨励賞(富士山本宮浅間大社 神田川ふれあい広場)
2019年 土木学会デザイン賞・最優秀賞(花園町通り)
2021年 静岡県景観賞優秀賞(道の駅 伊豆月ケ瀬)
2023年 グッドデザイン賞(皆生温泉エリアデザイン「ぐるぐるかいけ」)
2025年 ブルネル賞(長崎駅)
他
審査委員メッセージ
西村 浩先生
人口が減る。使われない場所が増える。すべてを維持することも、新しくつくり続けることもできない。そんな時代に、僕たちはどんな風景をつくるのでしょうか。
「縮退」を、衰退の言葉にしないでほしい。むしろ、これまでの都市や建築の常識を疑い、新しい豊かさを発明するチャンスだと考えてみてください。港は、海と陸、地域と世界、産業と暮らしが交わる場所です。そこにハードを置くだけでは、まちは変わらない。何をつくらないのか。何をやめるのか。誰が使い、誰が稼ぎ、誰が育て続けるのか。空間の先にある「営み」までデザインしてほしい。
僕たち審査員が見たこともないような、思わず嫉妬してしまう提案を待っています。
岩瀬 諒子先生
審査する側ではありますが、私自身も想像力を刺激され、これまで考えてこなかったことを一緒に考えさせてもらえるような機会になればと思っています。
河川ではなく港湾であること、その土木的な諸制度も心に留めつつ、時に制度を読み替え、時には創造性で楽しく乗り越え、新しい指針となるような案に期待しています。
場所や制度に潜む新しいファクトの発見と、そこから立ち上がる新しい思考に出会えたらと思います。
岡田 智秀先生
「港」は“さんずい(水にまつわる)”に“巷(ちまた)”の意を持ち、かつては「水門(みなと)」という語彙も用いられてきた。こうしたことが象徴するように、「港」の本来の姿(魅力)とは、ヒト・コト・モノが集積し賑わいをみせる「水辺の巷」であるとともに、内外のあらゆる生活物資や文化を受け入れる「まちのゲート(水の門)」としての機能を担い、背後の「まち」にさまざまな恩恵をもたらしてきた。結果として、「港」と背後の「まち」は有機的な関係が構築され、空間的にも「港」の機能と「まち」の構成要素が“混然一体”となり、いわゆる“みなとまち”が各地で形成されてきた。その後の変容による「港」と「まち」の乖離は本テーマの趣旨文のとおりであるが、1990年代以降になると、多様な政策・制度等によって、「港」はかつてのような賑わいを取り戻してきている。しかし、その手法は、ともすると内陸の発想に偏重し、「港」が本来有する機能をはじめ、情緒・雰囲気・記憶といった「港」のアイデンティティの欠如、すなわち「港」という空間が単なる都市的なアミューズメント空間へと歪曲されてしまわないか危惧することもある。
以上のような背景をふまえつつ、今年度の「景観開花。」のテーマ「DOCKing Port」の意味や語彙をよく読み解き、「港」と「まち」の融合とは何たるかを探究いただき、その結果を具体的な空間として体現いただけたら幸いである。
吉谷 崇先生
この世にあまねく存在する「境界」のなかで、最も力強く、それゆえに人々の浪漫をかき立てるもののひとつが、
陸と海との境目である海辺、そして港という場所だと思います。
一方、島国日本にとって、港はいまも資源やエネルギーを受け入れる主要な窓口であり、そして、
いうまでもなく防災と安全の最前線です。
そこは、極めて強い現実の力が支配している空間でもあります。
新しい価値は、既存の「境界」を捉え直すことから生まれます。
現実と浪漫のあわいを捉え、海と陸をつなぎなおすような、未来にむけて開かれた価値を感じさせる提案を期待しています。
